2020.10月.宮城.
宮城県は “杜の都” 仙台。
ここへは4年ほど前から頻繁に来ている。
この年も9月から12月まで毎月5日間ほど仙台で仕事をしていた。ここでの仕事内容は、高級ホテルのレストランやバーの家具についた傷を住込みで直すというもの。
はじめは皆「仕事現場に宿泊なんて絶対嫌だ!」と頑なに拒否してたけど、一度高級ホテル暮らしを味わってしまうと、誰も他のホテルに泊まろうなんて言わなくなった。
メンバーは僕とボス、そしてMさん。
Mさんはいつも安っぽいポロシャツを着ているおじさんなんだけど、どことなく金持ちっぽく見えるから不思議だ。もともと雰囲気がある人なので、『あらゆる贅沢を経験し、一周回って今のスタイルに辿り着いた超絶お金持ちの人』、そんな感じに見えなくも、ない。
実際は全然違うけど。
仙台での仕事は夜間になることが多い。
深夜のホテルはひっそりと静まり返り、騒がしい昼間の雰囲気とは打って変わって、何だか不気味だ。正直、僕はそんな夜のホテルの雰囲気がちょっと苦手なんだ。
エレベーターが開く瞬間は、中に “人以外の何か” が乗っていそうで、いつもドキドキする。そのうち廊下に『シャイニング』の双子の女の子がいるような気さえしてくる。昼間はそんな事考えないのに、誰もいない深夜のホテルはそんな恐怖のイメージを僕に掻き立てるんだ。
仕事が終わるのは朝方。
日が昇り始める頃に、僕らは各自の部屋に戻りベッドに入る。
そして昼頃起きる。
その頃にはホテルはいつもの騒がしい雰囲気に戻っていて、なんだかほっとする。
起きたら一旦は部屋の外に追い出される。ハウスキーピングさんに部屋を掃除してもらうからだ。別に必ず掃除してもらわないといけない規則があるわけじゃない。でも部屋に帰ってきた時、シーツがビシッと綺麗に敷かれていたら、やっぱり気持ちが良いからね。
掃除が終わるまでは、仙台の街をブラブラ散歩する。
有難いことに、こっちにも顔なじみの店がいくつかできた。3時間ほどして、『もういいかい?』と部屋に戻っても、『まあだだよ!』とハウスキーピングさんにまた追い返されてしまうこともある。そんな時は、近くの公園で、掃除が終わるまで更に待つことにする。
公園の銀杏並木は訪れるたびに秋の深まりを教えてくれた。
東京の銀杏並木がまだ青々としていた頃、仙台のはすっかり黄色くなっていた。気温は東京とそれほど変わらないのに、紅葉は仙台の方が1ヶ月ほど進んでいる。大体月1で訪れる度に、仙台の木々は葉っぱが散って寂しい感じになっていき、あっという間に冬になった。